逢いたい

イラスト by 中原さま

万葉の人々は、逢いたい気持ちをいろいろな歌で表現しました。とかく待つことが多かったと思われがちですが、万葉の時代にも「待ってなんかいられないわ」と積極的な女性もいたようですね。ただ、男性の方も、好きな女性に逢いたい気持ちをいろいろな歌で表現しました。

- Manyo people expressed their desire to meet(or see) in various poems. It's easy to think that girls were tend to only waiting, but it seems that some women were proactive in saying "I can't wait" even in the age of Manyo. On the other hand, men also expressed their desire to meet(or see) their favorite women in various poems.

  • 一目逢ったあの方が忘れられない・・・
  • 逢ってなおさら想いがつのる・・・
  • 別れたばかりなのに、逢いたい・・・
  • せめて夢の中だけでもお会いしたい・・・
  • どうしてこのごろ逢ってくださらないの・・・
  • 私から逢いにゆくわ・・・
  • あの娘(こ)に逢えないので落ち着かない・・・
  • 男のくせに、と自分でも思うのだが・・・

※単に「好きです」と詠んだ歌も交じっています。

0085: 君が行き日長くなりぬ山尋ね迎へか行かむ待ちにか待たむ

0090: 君が行き日長くなりぬ山たづの迎へを行かむ待つには待たじ

0115: 後れ居て恋ひつつあらずは追ひ及かむ道の隈廻に標結へ我が背

0117: 嘆きつつますらをのこの恋ふれこそ我が髪結ひの漬ちてぬれけれ

0123: たけばぬれたかねば長き妹が髪このころ見ぬに掻き入れつらむか

0125: 橘の蔭踏む道の八衢に物をぞ思ふ妹に逢はずして

0310: 東の市の植木の木垂るまで逢はず久しみうべ恋ひにけり

0370: 雨降らずとの曇る夜のぬるぬると恋ひつつ居りき君待ちがてり

0372: 春日を春日の山の高座の御笠の山に.......(長歌)

0390: 軽の池の浦廻行き廻る鴨すらに玉藻の上にひとり寝なくに

0393: 見えずとも誰れ恋ひざらめ山の端にいさよふ月を外に見てしか

0403: 朝に日に見まく欲りするその玉をいかにせばかも手ゆ離れずあらむ

0409: 一日には千重波しきに思へどもなぞその玉の手に巻きかたき

0484: 一日こそ人も待ちよき長き日をかくのみ待たば有りかつましじ

0485: 神代より生れ継ぎ来れば人さはに.......(長歌)

0488: 君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く

0491: 川上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

0494: 我妹子を相知らしめし人をこそ恋のまされば恨めしみ思へ

0518: 春日野の山辺の道をよそりなく通ひし君が見えぬころかも

0523: よく渡る人は年にもありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける

0524: むし衾なごやが下に伏せれども妹とし寝ねば肌し寒しも

0545: 我が背子が跡踏み求め追ひ行かば紀の関守い留めてむかも

0552: 我が君はわけをば死ねと思へかも逢ふ夜逢はぬ夜二走るらむ

0593: 君に恋ひいたもすべなみ奈良山の小松が下に立ち嘆くかも

0560: 恋ひ死なむ後は何せむ生ける日のためこそ妹を見まく欲りすれ

0599: 朝霧のおほに相見し人故に命死ぬべく恋ひわたるかも

0604: 剣大刀身に取り添ふと夢に見つ何のさがぞも君に逢はむため

0607: 皆人を寝よとの鐘は打つなれど君をし思へば寐ねかてぬかも

0638: ただ一夜隔てしからにあらたまの月か経ぬると心惑ひぬ

0648: 相見ずて日長くなりぬこの頃はいかに幸くやいふかし我妹

0661: 恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽してよ長くと思はば

0662: 網児の山五百重隠せる佐堤の崎さで延へし子が夢にし見ゆる

0666: 相見ぬは幾久さにもあらなくにここだく我れは恋ひつつもあるか

0669: あしひきの山橘の色に出でよ語らひ継ぎて逢ふこともあらむ

0678: 直に逢ひて見てばのみこそたまきはる命に向ふ我が恋やまめ

0679: いなと言はば強ひめや我が背菅の根の思ひ乱れて恋ひつつもあらむ

0686: このころは千年や行きも過ぎぬると我れやしか思ふ見まく欲りかも

0689: 海山も隔たらなくに何しかも目言をだにもここだ乏しき

0691: ももしきの大宮人は多かれど心に乗りて思ほゆる妹

0698: 春日野に朝居る雲のしくしくに我れは恋ひ増す月に日に異に

0701: はつはつに人を相見ていかにあらむいづれの日にかまた外に見む

0702: ぬばたまのその夜の月夜今日までに我れは忘れず間なくし思へば

0703: 我が背子を相見しその日今日までに我が衣手は干る時もなし

0704: 栲縄の長き命を欲りしくは絶えずて人を見まく欲りこそ

0710: み空行く月の光にただ一目相見し人の夢にし見ゆる

0717: つれもなくあるらむ人を片思に我れは思へばわびしくもあるか

0733: うつせみの世やも二行く何すとか妹に逢はずて我がひとり寝む

0751: 相見ては幾日も経ぬをここだくもくるひにくるひ思ほゆるかも

0768: 今知らす久迩の都に妹に逢はず久しくなりぬ行きて早見な

0783: をととしの先つ年より今年まで恋ふれどなぞも妹に逢ひかたき

0785: 我がやどの草の上白く置く露の身も惜しからず妹に逢はずあれば

0807: うつつには逢ふよしもなしぬばたまの夜の夢にを継ぎて見えこそ

0809: 直に逢はずあらくも多く敷栲の枕去らずて夢にし見えむ

0953: さを鹿の鳴くなる山を越え行かむ日だにや君がはた逢はざらむ

0993: 月立ちてただ三日月の眉根掻き日長く恋ひし君に逢へるかも

1256: 春霞井の上ゆ直に道はあれど君に逢はむとた廻り来も

1367: 三国山木末に住まふむささびの鳥待つごとく我れ待ち痩せむ

1401: 水霧らふ沖つ小島に風をいたみ舟寄せかねつ心は思へど

1526: 玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは

1606: 君待つと我が恋ひをれば我が宿の簾動かし秋の風吹く

1611: あしひきの山下響め鳴く鹿の言ともしかも我が心夫

1620: あらたまの月立つまでに来まさねば夢にし見つつ思ひぞ我がせし

1630: 高円の野辺のかほ花面影に見えつつ妹は忘れかねつも

1655: 高山の菅の葉しのぎ降る雪の消ぬと言ふべくも恋の繁けく

1792: 白玉の人のその名をなかなかに.......(長歌)

1794: たち変り月重なりて逢はねどもさね忘らえず面影にして

1891: 冬こもり春咲く花を手折り持ち千たびの限り恋ひわたるかも

1894: 霞立つ春の長日を恋ひ暮らし夜も更けゆくに妹も逢はぬかも

1900: 梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてり

1909: 春霞山にたなびきおほほしく妹を相見て後恋ひむかも

1911: さ丹つらふ妹を思ふと霞立つ春日もくれに恋ひわたるかも

1915: 我が背子に恋ひてすべなみ春雨の降るわき知らず出でて来しかも

1932: 春雨のやまず降る降る我が恋ふる人の目すらを相見せなくに

1934: 相思はぬ妹をやもとな菅の根の長き春日を思ひ暮らさむ

1973: 我妹子に楝の花は散り過ぎず今咲けるごとありこせぬかも

1986: 我れのみやかく恋すらむかきつはた丹つらふ妹はいかにかあるらむ

2112: 我がやどに咲ける秋萩常ならば我が待つ人に見せましものを

2277: さを鹿の入野のすすき初尾花いづれの時か妹が手まかむ

2283: 我妹子に逢坂山のはだすすき穂には咲き出ず恋ひわたるかも

2301: よしゑやし恋ひじとすれど秋風の寒く吹く夜は君をしぞ思ふ

2311: はだすすき穂には咲き出ぬ恋をぞ我がする玉かぎるただ一目のみ見し人ゆゑに

2366: まそ鏡見しかと思ふ妹も逢はぬかも玉の緒の絶えたる恋の繁きこのころ

2402: 妹があたり遠くも見ればあやしくも我れは恋ふるか逢ふよしなしに

2449: 香具山に雲居たなびきおほほしく相見し子らを後恋ひむかも

2465: 我が背子に我が恋ひ居れば我が宿の草さへ思ひうらぶれにけり

2512: 味酒のみもろの山に立つ月の見が欲し君が馬の音ぞする

2521: かきつはた丹つらふ君をいささめに思ひ出でつつ嘆きつるかも

2538: ひとり寝と薦朽ちめやも綾席緒になるまでに君をし待たむ

2539: 相見ては千年やいぬるいなをかも我れやしか思ふ君待ちかてに

2544: うつつには逢ふよしもなし夢にだに間なく見え君恋ひに死ぬべし

2550: 立ちて思ひ居てもぞ思ふ紅の赤裳裾引き去にし姿を

2559: 昨日見て今日こそ隔て我妹子がここだく継ぎて見まくし欲しも

2569: 思ふらむその人なれやぬばたまの夜ごとに君が夢にし見ゆる

2580: 面形の忘るとあらばあづきなく男じものや恋ひつつ居らむ

2597: いかにして忘れむものぞ我妹子に恋はまされど忘らえなくに

2605: 玉桙の道行きぶりに思はぬに妹を相見て恋ふるころかも

2612: 白栲の袖触れてし夜我が背子に我が恋ふらくはやむ時もなし

2631: ぬばたまの黒髪敷きて長き夜を手枕の上に妹待つらむか

2662: 我妹子にまたも逢はむとちはやぶる神の社を祷まぬ日はなし

2666: 妹が目の見まく欲しけく夕闇の木の葉隠れる月待つごとし

2673: ぬばたまの夜渡る月のゆつりなばさらにや妹に我が恋ひ居らむ

2684: 笠なしと人には言ひて雨障み留まりし君が姿し思ほゆ

2695: 我妹子に逢ふよしをなみ駿河なる富士の高嶺の燃えつつかあらむ

2713: 明日香川行く瀬を早み早けむと待つらむ妹をこの日暮らしつ

2776: 道の辺の草を冬野に踏み枯らし我れ立ち待つと妹に告げこそ

2792: 玉の緒の現し心や年月の行きかはるまで妹に逢はずあらむ

2793: 玉の緒の間も置かず見まく欲り我が思ふ妹は家遠くありて

2864: 我が背子を今か今かと待ち居るに夜の更けゆけば嘆きつるかも

2870: 我が背子が来むと語りし夜は過ぎぬしゑやさらさらしこり来めやも

2881: 立ちて居てすべのたどきも今はなし妹に逢はずて月の経ぬれば

2883: 外目にも君が姿を見てばこそ我が恋やまめ命死なずは

2903: いとのきて薄き眉根をいたづらに掻かしめつつも逢はぬ人かも

2908: 常かくし恋ふれば苦ししましくも心休めむ事計りせよ

2921: たわや女は同じ心にしましくもやむ時もなく見てむとぞ思ふ

2922: 夕さらば君に逢はむと思へこそ日の暮るらくも嬉しくありけれ

2923: ただ今日も君には逢はめど人言を繁み逢はずて恋ひわたるかも

2929: 宵々に我が立ち待つにけだしくも君来まさずは苦しかるべし

2931: 思ひつつ居れば苦しもぬばたまの夜に至らば我れこそ行かめ

2932: 心には燃えて思へどうつせみの人目を繁み妹に逢はぬかも

2933: 相思はず君はまさめど片恋に我れはぞ恋ふる君が姿に

2936: 今は我は死なむよ我が背恋すれば一夜一日も安けくもなし

2952: 我が命の衰へぬれば白栲の袖のなれにし君をしぞ思ふ

2978: まそ鏡見ませ我が背子我が形見待てらむ時に逢はざらめやも

2991: たらちねの母が飼ふ蚕の繭隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして

3002: あしひきの山より出づる月待つと人には言ひて妹待つ我れを

3006: 月夜よみ門に出で立ち足占して行く時さへや妹に逢はずあらむ

3008: あしひきの山を木高み夕月をいつかと君を待つが苦しさ

3011: 我妹子に衣春日の宜寸川よしもあらぬか妹が目を見む

3018: 高湍なる能登瀬の川の後も逢はむ妹には我れは今にあらずとも

3029: 佐太の浦に寄する白波間なく思ふを何か妹に逢ひかたき

3037: 殺目山行き返り道の朝霞ほのかにだにや妹に逢はざらむ

3044: 君待つと庭のみ居ればうち靡く我が黒髪に霜ぞ置きにける

3053: あしひきの山菅の根のねもころにやまず思はば妹に逢はむかも

3103: 逢はなくはしかもありなむ玉梓の使をだにも待ちやかねてむ

3121: 我が背子が使を待つと笠も着ず出でつつぞ見し雨の降らくに

3122: 心なき雨にもあるか人目守り乏しき妹に今日だに逢はむを

3154: いで我が駒早く行きこそ真土山待つらむ妹を行きて早見む

3165: 霍公鳥飛幡の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがも

3255: 古ゆ言ひ継ぎけらく恋すれば.......(長歌)

3260: 小治田の年魚道の水を間なくぞ.......(長歌)

3261: 思ひ遣るすべのたづきも今はなし君に逢はずて年の経ぬれば

3271: 我が心焼くも我れなりはしきやし君に恋ふるも我が心から

3283: 今さらに恋ふとも君に逢はめやも寝る夜をおちず夢に見えこそ

3297: 玉たすき懸けぬ時なく我が思ふ.......(長歌)

3462: あしひきの山沢人の人さはにまなと言ふ子があやに愛しさ

3470: 相見ては千年やいぬるいなをかも我れやしか思ふ君待ちがてに

3778: 白栲の我が衣手を取り持ちて斎へ我が背子直に逢ふまでに

補足

更新日: 2020年04月26日(日)