山上憶良(やまのうえのおくら) Yamanoue-no-Okura

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山上憶良(やまのうえのおくら)は斉明天皇(さいめいてんのう)6年(西暦660年)生まれと言われています。これは、天平5年(西暦733年)に書いたとされる第五巻に載っている「沈痾自哀(ちんあじあい)の文」の中に、「この時に年は七十有四にして」というところから逆算したものです。万葉集には、40歳を過ぎてからの歌が載っています。

- Yamanoue-no-Okura is said to have been born in the 6th year of Emperor Saimei(AD660). His birth year is calculated back from the contents of poem "Chinajiai(heart to sink by illness, and feel sad myself)" which is written in the fifth volume, which poem is said to have been written in Tenpyo 5 (AD733). Manyoshu includes poems created when he was over 40 years old.

神亀三年(西暦726年)頃に、九州に赴任しましたが、そのときの大宰帥(だざいのそち)は、大伴旅人(おおとものたびと)だったんですよ。

山上憶良(やまのうえのおくら)が詠んだ歌

山上憶良の歌は、子どものことを想った歌が特徴だと思われます。また、病気や貧乏など、人生の苦しい面や、その時代の問題を扱っているのが特色でしょう。意外に多いのが、七夕を詠んだ歌です。長屋王(ながやおう)邸で詠んだ歌や、大伴旅人邸で詠んだ七夕(たなばた)の歌があります。

0034: 白波の浜松が枝の手向けぐさ幾代までにか年の経ぬらむ

0063: いざ子ども早く日本へ大伴の御津の浜松待ち恋ひぬらむ

0145: 鳥翔成あり通ひつつ見らめども人こそ知らね松は知るらむ

0337: 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむぞ

0794: 大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国に.......(長歌)

0795: 家に行きていかにか我がせむ枕付く妻屋寂しく思ほゆべしも

0796: はしきよしかくのみからに慕ひ来し妹が心のすべもすべなさ

0797: 悔しかもかく知らませばあをによし国内ことごと見せましものを

0798: 妹が見し楝の花は散りぬべし我が泣く涙いまだ干なくに

0799: 大野山霧立ちわたる我が嘆くおきその風に霧立ちわたる

0800: 父母を見れば貴し妻子見ればめぐし愛し.......(長歌)

0801: ひさかたの天道は遠しなほなほに家に帰りて業を為まさに

0802: 瓜食めば子ども思ほゆ栗食めば.......(長歌)

0803: 銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも

0804: 世間のすべなきものは年月は流るるごとし.......(長歌)

0805: 常磐なすかくしもがもと思へども世の事なれば留みかねつも

0813: かけまくはあやに畏し足日女神の命.......(長歌)

0814: 天地のともに久しく言ひ継げとこの奇し御魂敷かしけらしも

0818: 春さればまづ咲くやどの梅の花独り見つつや春日暮らさむ

0868: 松浦県佐用姫の子が領巾振りし山の名のみや聞きつつ居らむ

0869: 足姫神の命の魚釣らすとみ立たしせりし石を誰れ見き

0870: 百日しも行かぬ松浦道今日行きて明日は来なむを何か障れる

0874: 海原の沖行く船を帰れとか領巾振らしけむ松浦佐用姫

0875: 行く船を振り留みかねいかばかり恋しくありけむ松浦佐用姫

0876: 天飛ぶや鳥にもがもや都まで送りまをして飛び帰るもの

0877: ひともねのうらぶれ居るに龍田山御馬近づかば忘らしなむか

0878: 言ひつつも後こそ知らめとのしくも寂しけめやも君いまさずして

0879: 万世にいましたまひて天の下奏したまはね朝廷去らずて

0880: 天離る鄙に五年住まひつつ都のてぶり忘らえにけり

0881: かくのみや息づき居らむあらたまの来経行く年の限り知らずて

0882: 我が主の御霊賜ひて春さらば奈良の都に召上げたまはね

0886: うちひさす宮へ上るとたらちしや母が手離れ.......(長歌)

0887: たらちしの母が目見ずておほほしくいづち向きてか我が別るらむ

0888: 常知らぬ道の長手をくれくれといかにか行かむ糧はなしに

0889: 家にありて母がとり見ば慰むる心はあらまし死なば死ぬとも

0890: 出でて行きし日を数へつつ今日今日と我を待たすらむ父母らはも

0891: 一世にはふたたび見えぬ父母を置きてや長く我が別れなむ

0892: 風雑り雨降る夜の雨雑り雪降る夜は.......(長歌)

0893: 世間を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

0894: 神代より言ひ伝て来らくそらみつ.......(長歌)

0895: 大伴の御津の松原かき掃きて我れ立ち待たむ早帰りませ

0896: 難波津に御船泊てぬと聞こえ来ば紐解き放けて立ち走りせむ

0897: たまきはるうちの限りは平らけく.......(長歌)

0898: 慰むる心はなしに雲隠り鳴き行く鳥の音のみし泣かゆ

0899: すべもなく苦しくあれば出で走り去ななと思へどこらに障りぬ

0900: 富人の家の子どもの着る身なみ腐し捨つらむ絹綿らはも

0901: 荒栲の布衣をだに着せかてにかくや嘆かむ為むすべをなみ

0902: 水沫なすもろき命も栲縄の千尋にもがと願ひ暮らしつ

0903: しつたまき数にもあらぬ身にはあれど千年にもがと思ほゆるかも

0904: 世間の貴び願ふ七種の宝も我れは.......(長歌)

0905: 若ければ道行き知らじ賄はせむ黄泉の使負ひて通らせ

0906: 布施置きて我れは祈ひ祷むあざむかず直に率行きて天道知らしめ

0978: 士やも空しくあるべき万代に語り継ぐべき名は立てずして

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[ 山上憶良の七夕の歌十二首 ]

1518: 天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな

1519: 久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ

1520: 彦星は織女と天地の別れし時ゆ.......(長歌)

1521: 風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の言ぞ通はぬ

1522: たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき

1523: 秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる

1524: 天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を

1525: 袖振らば見も交しつべく近けども渡るすべなし秋にしあらねば

1526: 玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは

1527: 彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立てるは

1528: 霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の裾濡れぬ

1529: 天の川浮津の波音騒くなり我が待つ君し舟出すらしも

[ 山上憶良の七夕の歌十二首 ] ここまで。

[ 山上臣憶良 秋野の花を詠む歌二首 ]

1537: 秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花

1538: 萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花

1716: 白波の浜松の木の手向けくさ幾代までにか年は経ぬらむ

3860: 大君の遣はさなくにさかしらに行きし荒雄ら沖に袖振る

3861: 荒雄らを来むか来じかと飯盛りて門に出で立ち待てど来まさず

3862: 志賀の山いたくな伐りそ荒雄らがよすかの山と見つつ偲はむ

3863: 荒雄らが行きにし日より志賀の海人の大浦田沼は寂しくもあるか

3864: 官こそさしても遣らめさかしらに行きし荒雄ら波に袖振る

3865: 荒雄らは妻子の業をば思はずろ年の八年を待てど来まさず

3866: 沖つ鳥鴨とふ船の帰り来ば也良の崎守早く告げこそ

3867: 沖つ鳥鴨とふ船は也良の崎廻みて漕ぎ来と聞こえ来ぬかも

3868: 沖行くや赤ら小舟につと遣らばけだし人見て開き見むかも

3869: 大船に小舟引き添へ潜くとも志賀の荒雄に潜き逢はめやも

更新日: 2020年08月12日(水)